2013年2月1日金曜日

卒業制作展 真っ盛りー工芸編 その1(工芸ー6)

1月も後わずかになり、いよいよ受験シーズンに突入してきました。
受験生にとっては1年間に蓄えた実力を遺憾なく発揮する時が来ました。

各大学では新1年生を迎え入れる入試の時期の前後に、芸大・美大の卒業生の卒業制作を一堂に発表する卒業・修了作品展が開催されます。
もう既に見に行かれ方も多いと思いますが、現在、東京芸大卒業・修了作品展が1月31日まで上野の都美術館や芸大美術館で開かれています。
4年前に御茶美から大学に入った、いわばOCHABI OBOGの卒業生も多く出品しています。

その皆さんが4年間工芸科で学んだことを卒業作品に凝縮しているので、その作品と作者のお話をご紹介したいと思います。

金井麻央さん「tempus」 (東京芸大工芸科 漆芸専攻)


















金井さんの作品は幅63cm、高さ49cmの大きさの作品で、船の形の上に
精緻に作り込んでいるかわいい動物が楽しそうに生活しています。まるでノアの方船の楽園版といった趣きです。以下は作者から聞いた内容です。



















Q: この作品のコンセプトを教えてください。
A: タイトルのtempusとはラテン語で「時」という意味です。
  長い時間にわたって動物を育んだ、「時」というものを、人間が一瞬にして             奪ってしまったと考えます。そしてもし人間が途絶えたとしても、「時」は永遠に続き、これから先も動物はずっと生き続けて行くだろうと思います。
そんな動物に対する畏敬の念からこの作品は生まれました。

Q: 制作にはどのくらい時間がかかりましたか?
A: 漆の仕事は塗っては乾かしの繰り返しなのでとても時間がかかります。
  船の部分は乾漆で出来ていて漆を20回ほど塗り重ねています。
  4年生の5月頃から制作に入りましたので約9ヶ月ほどかかりました。


















Q: 制作上、苦労した所は?
A: 動物は柘植の木を彫って作っていますが、小さく細い所も多いので、細心の注意を払って彫りました。あとは蒔絵技法(漆で文様を描き、乾かぬうちに金などの金属粉を蒔き、固着させて造形する技法)も使っていますが、船の曲面への蒔絵が難しかったです。


Q:卒業後の予定は?
A:これから大学院を目指す予定で、もし大学院に進めたら自然界のモチーフを生かして、小さな作品でも宇宙観を大事に造形していきたいと思っています。

Q: 最後に漆の魅力とは?
A: 私は蒔絵に興味を持っていて、黒い地肌に金色の蒔絵はとても奇麗だと思います。特に蒔絵を施した古い漆の作品などに魅かれ、その美しさをこれからの新しい作品に反映させたいと思っています。

   ありがとうございました。今後の作品を楽しみにしています・・。

工芸科主任 藤田政利